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どもども。そろそろ冒頭の挨拶もネタがなくなってきたいおんぐりっどです。京急関連で怒涛の3連続ブログ更新をしてしまい少々疲れてきましたが、この記事が一応今回の大量更新のラストになります。
タイトルの通りメトロ6000系ハイフン車の製作になります。実はこちらも件の知り合いからの依頼で作ったものになります。鉄コレをベースに各所を加工して実車に極力近づけてみました。
メトロ6000ハイフンといえば革新的な営団6000系列の先駆けとして登場し、各種新技術の試験に供された名車であることをご存知の方も多いかと思います。世界初のサイリスタチョッパ制御の実用化に向けた試験のほか、日本で初となるVVVFインバータの現車搭載試験など何かと「初」の技術を多く詰め込んだ車でありまして、まさに革新的だと言えるでしょう。個人的には、京急でもおなじみの三菱の電気指令式空気ブレーキシステムの先駆けとなる形式であることから営団6000と聞くとまずブレーキのことを思い出します。ブレーキについては当時の開発エピソードなどを聞く機会がありましたので後半で軽く紹介させていただこうかと思います。
今回模型のプロトタイプとしたのは引退直前の仕様ということで、綾瀬支線で活躍していた姿を製作しました。同時期に活躍した5000系3連と仕様を合わせるために台車や主回路、ブレーキ周りが5000系と同等の装備になっている仕様になります。具体的には、制御方式が抵抗制御、ブレーキ方式が電磁直通式に改造された後の姿です。
ざっくりと加工点を整理すると以下のようになります。
①車体ドア部塗装(クレオス35番)・アンチクライマ塗装(クレオスMc211番)
②前面帯嵌り改善加工
③床下機器・前面運転台下機器取り付け(自作データによる3Dパーツ)
④台車加工
⑤屋根色差し・集電装置交換・冷房装置塗装
①車体塗装関連
製品ではドア部分も銀色の塗装で再現されていたため、ドア部分の帯を残すようにマスキングしてクレオス35番 明灰白色で塗装をしました。同時に、前面のアンチクライマについても金属材の違いによる質感を表現するためにクレオスMc211番クロームシルバーで塗り分けをしました。
②前面帯嵌り加工
製品発売当初からTwitterなどで言われていた話として、前面の緑帯部分のパーツの嵌りが悪く、広がっているような状態になっていることが挙げられます。これは車体側の寸法に対して緑帯パーツの内側寸法がわずかに小さいことに起因するようで、今回の加工では帯パーツの内側を強度に気をつけながら削り込むことで広がらずに嵌るよう調整をしました。嵌りがよくなったと同時に外れやすくもなるので接着剤で固定してあります。特に外す用事もなさそうなのでこれでも問題なさそうです。
③床下関連
今回は鉄コレベースの改造ということもあり、製品に特に流用できそうな機器も見当たらなかったためすべての床下機器を自作データの3Dパーツによって表現しています。モデリングにあたって、床下資料が非常に乏しく、またすでに引退後の車両であるため観察に行くこともできずに難儀したのを覚えています。たまたま家にあったとれいんの東京メトロ特集の回に床下写真が掲載されていたので、これを取り込んでトレースする形で3Dデータ製作をしました。抵抗制御車特有の細かい機器や凹凸の多い筐体ばかりで大変でしたが、3両のみの製作だったのが救いでした。

パーツが届いてしまえばあとは取り付けるだけなので非常に簡単な作業です。
こちらの京急旧1000形の記事ですでにその細密さは確認した3Dプリンタによる抵抗器の表現もうまくいったようで一安心です。また空気圧縮機などについても、ほかの編成の資料写真をもとに極限まで細密に再現してみました。抵抗器や空気圧縮機などの凹凸の多い形状の機器をしっかり作り込むことで床下にメリハリが生まれ引き締まることがよくわかりますね。
前面の運転台下機器については、詳細な資料が用意できなかったため雰囲気重視でそれっぽい箱をモデリングして取り付けています。電磁直通車っぽさを出すために銀河モデル製の3段配管エッチングパーツも使ってみました。
④台車加工
先述の通り北綾瀬支線での運用開始に伴い5000系のFS-502形台車に振り替えられたため、製品の台車を加工して使用する必要があります。具体的にはブレーキシリンダの削除とブレーキリンクの一部切除になります。実車ではCT車のみ落成時からの台車が改修され使用されていますが、見た目としてはFS-502形とほぼ同様なため模型では3両とも同じ加工をしています。先頭台車にはプラ材の組み立てで排障器を取り付けてみました。前面下部オオイがない形式ですのでいいアクセントになっています。
⑤屋根回り
屋根は配管色差しをいつも通り行っています。パンタグラフについてはTOMIX製のものに交換し、避雷器も別で取り付けをしました。また冷房装置のカバーの色味が良くなかったのでこれについてはGM14番灰色9号で塗装しました。
ざっくり加工点はこんな感じです。今回使用したパーツについてはDMM.makeの私のページで販売をしていますのでよろしかったらご活用いただければ幸いです。
さて、今回は加工ポイントが先の紹介となってしまいましたがここで各車を見ていきましょう。
6000-1号車(CT)
海側
山側
綾瀬方の制御付随車です。制御車ながら集電装置を有しているのが特徴で、床下では主に補助電源装置を装備しているようです。落成当初は試験用に三菱の電機子チョッパ装置を装備していたそうですがこれも現在では撤去されています。3両とも共通ですが、いかにも三菱といった感じの筐体をしたブレーキ制御装置がいいですね。
6000-2号車(M1)
海側

山側

中間電動車です。落成当初から抵抗制御の主制御器(CS)を有する車です。海側に並ぶそろばん抵抗とその反対側側面に艤装されるCSと断流器がいかにも抵抗制御車だなといった外観です。
6000-3号車(CM2)
海側
山側
北綾瀬方の制御電動車です。模型で再現した形態では隣のM1とユニットを組む車になります。蓄電池と電動発電機(MG)などを装備しています。山側のATC関連の機器箱も目立つポイントです。
いかんせん資料が少ないので細かい機器の詳細をお話できなかったのが申し訳ないところですが各車の紹介は以上になります。
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おまけ:6000のブレーキシステムについて
冒頭で少し述べましたが、6000形では三菱の電気指令式空気ブレーキが用いられています。京急車のMBSA作用装置などでその名前を聞いた方も多いかと思いますが、実は営団6000系世代の電車がその先駆けとなっています。遡ること1960年ごろ、三菱電機と三菱重工共同で電気指令式ブレーキの開発が進められており、制御システムなどの電気的な部分を三菱電機が、弁体などの機械的な要素を三菱重工がそれぞれ担当していました。
これら新開発の電気指令式ブレーキは大きく分けて2つに分類され、1つは複数の指令線のON/OFFでブレーキステップの指令を行うデジタル式、もう1つは1本の線に流す電流信号の強さで指令するアナログ式でした。このうち前者は営団6000系よりも少し前に登場した大市交30系でOEC-1という名称で採用されました。三菱サイドではMitsubishi Brake system Step by stepの略称であるMBSと呼ばれ、京急のMBSAなどについてもこのMBSの進化形であると言えます。もう一方のアナログ式に関しては自在制御、連続制御を意味するFreqencyから取ってMBFと名付けられ、営団6000系ではこの方式が採用されました。
営団6000でMBFを採用した理由としては電空協調の演算にアナログ式指令の方が優れていたからだと耳にしたことがあります。やはり電機子チョッパの回生性能を活用したかったのでしょう。黎明期のMBSでは多段式中継弁の膜板不良なども多発しており、整備に難儀したという話も聞きますので当時の営団の選択は正しかったのかもしれません。
ブレーキの指令は応答性の観点から完全に電気のみで行い、実際に供給する圧縮空気はブレーキの近くで生成するようにと当時の6000系開発時に強い指示が飛んだそうです。これは電気信号による指令を基に電空変換弁(EP弁)で所望の空気圧力を生成し、これを中継弁で増幅し実際にブレーキシリンダに供給する空気を生成する方式ですが、今の電車ではすでに当たり前の装備になっています。
近年ではこれらの装置の小型化、さらに伝送系の進化と相まってきめ細かで高速な制御もできるようになってきました。特に目を見張るものでは近年開発・実用化された電空一体小型分散式ブレーキ制御装置(Integrarted Electronic Relay Valve=IERV) が挙げられます。これは電空変換弁と中継弁の機械部品、ブレーキ受量器や演算装置などの制御モジュールなどをひとまとめにパッケージ化したもので、筐体のサイズが40㎝四方未満と非常に小さいことから各台車近傍にそれぞれ設置し、これらを高速の伝送装置で接続することで台車や軸単位での細かいブレーキトルク制御を可能になりました。現在ではメトロ1000/2000系などですでに実用化されていますが、このような最新のブレーキシステムの源流も50年前に開発された6000系にあると考えると、現代の車両の根幹をなす名車だったことが伺えるかと思います。
おまけ、おわり
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さて、長々と書いてきてしまいましたがいかがでしたでしょうか。様々な技術の原点とされつつも今まであまり知る機会がなかった6000系ですが、今回の製作を通してよりその良さが分かった気がします。現車はすでに引退してしまいましたが、この技術を引き継いだたくさんの車両が今も走っていると考えると、やはり車両というのは既存の技術をベースに日々進化していくものであることを強く実感させられます。ただ模型を作るだけではなく、車両を技術的な視点で観察することの楽しさを再認識させてもらえるいい機会でした。また次回も技術的な視点も交えつつ模型のお話ができればと思います。それでは
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